カテゴリ:イギリスでのこと(環境保全)( 9 )

地味~な植物

イギリスに行くまで「ライケン」ってものの存在を、私は知りませんでした。

ライケンってのは、日本語をあてるとすると「地衣」というらしい。木肌に生える「こけ」みたいなのですが、あまり湿ったカンジではないところで、私の印象だと「水分を吸って」」というより「空気を吸って」生きているようなカンジのするものです。

ライケン、というと、辞書で最初に出てくるのは鉄道模型などに使われるジオラマで草木のところ使われる、くしゃくしゃとしたスポンジ状の植物の代替になるもの。そもそもは海藻でできているらしい。

確かに、自然界で見られるライケンと質感がとても似ています。でも、本物は海藻ではなく、カラマツとかの木の幹にフワフワ密生している「藻」です。

ライケンを初めて知ったのは、イギリスにいた時でした。日本でも少し田舎に行けばたくさんあったんでしょうけど、生活の中で目に留まったことはありませんでした。

イギリスは、生物多様性がとても限られている国だなぁと思ったものです。島国で、それほど(昔の植民地を除けば)国土に南北の広がりもなく、それほど高低差のある地形でもなく。

そんな中で、人々は、限られた生態系の多様性の中に生きる、地味めの植物や動物をとことん時間をかけて観察し、分類し、愛でていました。

だからでしょう。ここにはライケンだけをじっくり観察している私の友人もいたのです(笑)

彼女によると、ライケンが大きく育つかどうかは、空気が澄んでいるかどうかにかかっている、ということ。

その話を聞いて以来、「藻」なんですけど、大きく伸びたり、広がったりしているライケンを見つけると、「ここは空気がきれいなところなんだ~」と思ったものです。

生きているのか、既にドライフラワーになっているのか、まったくわからない、水分の無さ感と、その繊細な形が、他の植物にはないカンジ。そのドライなカンジがなんだかカゴにもぴったりな気がして、500円玉大のちっちゃなバスケットを作ってみたので、そこに入れてみました。
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なんだか、盆栽みたいですかね。
by nicecuppatea | 2014-05-29 21:44 | イギリスでのこと(環境保全) | Comments(2)

バーントウッド・ナーサリー④ナーサリーの狩人

引き続き、もうすこしイギリス滞在時代のバイト先の話を<(_ _)>

ナーサリーで私の作った「ティータイム用」バスケットを自分のカゴのように使う猫、チョータ。
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家主のリチャードから「ネズミを捕りなさい」と言われていて、あまりご飯をもらっていなかったらしい。私たちが朝納屋にやってくるのを見ると、いつも向こうの方から

にゃぁ…あ…あぁ…

と途切れ途切れの声で鳴きながら、こちらに走ってきます。ちなみにチョータというのはアラビア語で「小さいの」とかなんとかの意味らしい。リチャードは、テリトリアル・アーミー(正確にはTerritorial and Army Volunteer Reserve - 国防義勇予備軍 - というらしいけれど)で中東にいたことがあるらしく、アラビア語の名前がつけられたのです。最初は小さかったかもしれないけれど、私が会った頃はお腹をすかせている割には、堂々としたもんでした。どうも、可哀そうに思う我らバイトが日々、何かのおやつを持って行っていたのが原因の模様。

私も日本にいたダンナ(当時はまだダンナではなかったが)にお願いして、「焼津のマグロ」など日本の誇る猫缶を送ってもらい^^
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声だしながら、食べてました(笑)そりゃあネズミ、捕るわけないわな^^;

それでも、本能はあるらしく。そして、狩りが容易な獲物へと向くらしく。。。

ある日の朝、ナーサリーに着いたら、同僚のキャロルが、「キジのヒナがかえってるわよ!」植え込みの隙間などに卵を産んで、それがかえったのでしょう。キジのヒナはウズラのものすごいミニチュアみたいで、縁日で売れそうなぐらい、すっごくかわいい♪

当然のことながら、卵の間は目立たなかなくても、卵からかえった途端に賑やかに自己主張し、すぐにチョータの知るところとなります...(^^;

どんなに人間がヒナを守ろうとしても、一度目を付けた猫から逃れさせることはできない。それも自然の摂理。

で、これが「狩り」をした直後のチョータ。ヒナがかえった当日の出来事でした(T_T)
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ヒナを守ってやれなかった、と気持ちにやり場のない私は鳥類研究をライフワークとしている友人のレンジャー、ピートに切々メールを送り訴えます。何とか守れなかったものか、そもそも猫を家猫にすればいいじゃないか、などなど理屈にもならないことを。まあ、惨劇を目の当たりにして感情のやり場がなかっただけかも。

ピートは当惑したように、そもそも猫もキジも人間が増やしたものだし、それぞれが食い合って淘汰されるのは自然の摂理だし。。。ごめんね、オレ冷たくて、と私の申し立てに困ったような返事。

そうか、危機に瀕している海鳥の保護に没頭しているピートには、猫もキジもどちらもあまりかわいくないものだったか(笑)

平和な平和なバーントウッドで、唯一私が体験した凄惨な現場、でした。
by nicecuppatea | 2014-03-20 20:03 | イギリスでのこと(環境保全) | Comments(0)

バーントウッド・ナーサリー③:初めてもらった大作注文

なんとなく、先日来、色々とイギリス滞在時の事を考えていたら、色々と思い出してきてしまい^^
さらにいくつか…

バーントウッド・ナーサリーの庭で、昼休みにリンデンの枝でバスケットを編んでいるところを見て、私のかご編み好きを知ったオーナー、リチャードの奥さんがある日、「子供が道路に飛び出さないように、通路をふさげるフェンスを編んでくれるかしら?どこの木を切って使っても構わないから。」

これが、私が生まれて初めてもらった「大きな枝編み」の注文でした。

イギリスには、様々な枝編みの伝統があり、バスケットは主にウィロー(ヤナギ)が使われ、それより大きな、牧場で家畜を囲うフェンス(ハードルと呼ばれています)などには、さらに太くて柔らかいヘーゼルの枝もよく使われています。今では家畜囲いに使うより、ガーデンフェンスなど、家のデザインの一環として使われることが多く、奥さんもそういう意図でオーダーしてくれたのです。

それまで自分で編んだことはなかったけれど、カントリーフェアで実物に触れ、本を読んでその技を知り、憧れていた私。「初の実践の場」が到来。

ナーサリー裏手の森に入り、適当な太さのロッドと言われるヘーゼルの萌芽をノコギリ切り出す贅沢。さながら本物のきこり気取りですよ♪

ヘーゼルが編み材としてどんなに優れているかは、私の「フォークロアの師匠」であるマイクからよく聞いていました。彼はヘーゼルを切っては、その柔らかい枝の特性を生かして色々な椅子を作ろうとしていました。手前が彼の作った二人用「ラブチェアー」♡後ろはイギリスの伝統的な、ヘーゼルを蒸気で曲げて作ったガーデンチェアー。
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こんなのを作るのは無理にしろ、私もなんとかヘーゼルでハードルを編みあげてみたい…とトライ。

実際編み始めてみると、直径3センチくらいの枝も従順で、折り返しのところでもねじるときれいに曲がり、まるで折れません。こんな木の特徴を見出して、いろいろなものに加工していったイギリス人の先人の知恵を感じます。

「今のイギリス人でこんなことする人、いないわよ。あなたイギリス人よりイギリス人的ね」と、奥さんがわざわざカメラを持って庭にでてきたことも^^ (いやいや、私のイギリス人の友人には、結構そういう人たちがいたんですがね…要はみんな、ちょっと変わっていたのかも・笑)
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自分でヘーゼルを森から切り出してフェンスを編む…なんて贅沢な機会は今後なかなかないと思いますが、住宅事情や気候の違う日本に帰ってきて、それでも何とかこのエッセンスを再現したくて、山梨の畑に通っていた頃は、剪定した梅の木の徒長枝を割いて、ヘーゼルのフェンスよりずっと小さな「庭用ついたて(?)」を編みました。
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けっこう楽しく編んだんだけど、今は周りにまっすぐな徒長枝が見つからず。。。

毎年梅の木の徒長枝を剪定する方、いらしたら、枝下さい〜^^
by nicecuppatea | 2014-03-19 21:23 | イギリスでのこと(環境保全) | Comments(3)

バーンドウッド・ナーサリー②:平和な仕事事情

先日ちょっと書いた、イギリス滞在中のバイト先、バーントウッド・ナーサリーでのことを引き続き^^

バーントウッド・ナーサリーは、ルールの何もない職場でした。オーダー品の発送がない日は、春にはブックと呼ばれる細い苗ポットへのコンポスト詰めや、何年もほったらかしの苗(そんなのもたくさんあった)の整理と植え替えを野外の机の上で一日中行ったり。
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夏には、収穫したクラブアップルを腐らせて果肉を洗い流して、種を取ったり。
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同じ作業を、昔、父が公園で拾ったぎんなんでやっていたことを思い出しました。あれは鼻が曲がるほど臭かったけど、こちらはリンゴのお酒の匂いで酔っぱらいそうになるほど。

一年を通じて、働いている間の明確なルールはひとつだけ。苗の植え替えの際、ポットの中にvine weevilとよばれる根切り虫(ゾウムシの幼虫)がいたら、迷わずつぶすこと(笑)

それ以外のルールがなかったので、昼休みに庭で、リンデンの木を剪定してでたたくさんの枝、あまりにまっすぐでやわらかかったので、ちょっと仕事を忘れてバスケットを作ってしまった…なんてのも、仕事時間に入れてくれました。

芝生の上で大きな枝を好きなだけ広げて、足も使ってざっくり編んだバスケット。私は終始、笑いながら作業していたに違いない。
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出来上がったカゴは、ティ—タイムのカップやビスケット運び用に、と思いましたが、ほどなく猫のチョータに占領され、彼のものに。
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今でもあそこで、誰かがこんな平和な「仕事」、してるのかなぁ。
by nicecuppatea | 2014-03-18 20:30 | イギリスでのこと(環境保全) | Comments(0)

バーントウッドナーサリー①:イギリス苗木屋バイト事情

種まきの季節がやってきます。

毎年の種まきはとっかかりが遅く、いつも他の人の畑と比べると成長遅れの感が否めないまま、毎年追いつくことなくシーズンんを終えていくのですが^^

イギリスにいた頃、実は種とり、種植え、育苗を随分やったものでした。

場所は「バーントウッド・ナーサリー」という苗木屋さん。ここで私は留学生時代の最後の1年ほどバイトをしてました。先日ここに当時の写真をアップした時に、ふと色々思い出したので、自分の備忘録のようになりますが、そこでの事を折に触れ書いておこうと思います。よろしかったらお付き合いを。

ナーサリーは、イギリス南部ハンプシャー州はウィンチェスターにほど近い、カントリーサイドの広大な土地の中にあり、そこにはオーナーであるリチャードの、土地の割に小さい、質素(といっても古くて立派)な、4人家族の住む家、それに庭師デイビッドのすむコテージと、いくつかの小さい会社がオフィスに使っている小さな長屋のようなコテージがありました。彼の生業が何だったのか、いまだによくわかりませんが、とても裕福なことは間違いなさそうで、苗木屋は慈善事業の一環の様に思えました。

この苗木屋、かなり商業ベースの苗木屋と変わっています。ボーボーの草や雑木の茂った中にあるナーサリーで育てているのは、地元ハンプシャー州の里山で採れた実や種子から発芽させた落葉樹の苗ばかり。この写真じゃどこだかわからないかもしれませんが、真ん中がすべて苗置き場(^^;奥に見える屋根が、庭師のデイビッドのコテージです。
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苗販売の宣伝をしている風でもありません。でも大口オーダーが入ってくる(笑)

お客様は地元の学校や、ローカルカウンシルと言われている自治体の環境・景観保護作業を担っている部門などです。

当時、開発や農地管理の一環で、大幅に減ったヘッジ(生垣)を回復させよう、とイギリス中のカントリーサイドで、多くの木が植えられていたというのが、トレンドだったと思います。15年くらい前だから今はどうかわからないけど。そしてヘッジの再生には、出来るだけ地元近くの里山で採れた種から育った苗を使おうというのが環境保全を考えるヒトタチの大方の方向性でした。

季節によって、ブラックソーン、クラブアップル、エルダー、オーク、ゲルダーローズなどなどの実の収穫、種植え、植え替え、草むしりなど、ひたすらカントリーサイドにいることを楽しめるような、仕事というのは申し訳ないような、仕事をしてました。

あの時は、クラブアップルも、エルダーも、ちゃんと芽が出たのになぁ。日本でも同じような実のなる木がほしくて種を植えてみたけど、同じように発芽はしなかったなぁ~。やはり、その場所に適したものしか元気に育たないってことなのでしょう。

どんな風に仕事を楽しんだかは、またいづれ^^
by nicecuppatea | 2014-03-15 19:17 | イギリスでのこと(環境保全) | Comments(2)

イギリスの森とトトロの森の共通点

つい先日、宮崎駿監督の「引退」が、ニュースを賑わせていましたね。

正直、この年になるまで、ジブリ映画をきちんと観たことは一度もないのですが、たまたま、自分が引っ越してきた場所が「トトロのふるさと」と言われているエリアである、ということで、最近になって、身近に感じることが多くなってきました。

毎日のように、ピーチの散歩に行ったり、ジョギングで通る場所が「トトロの森」と言われるところ。よく知らないのですが、このあたりの里山は基金が買い取って、保全を行っているらしいのです。先日も、森の中をピーチと散歩していると、

「萌芽更新中」

の張り紙がありました。あたりの斜面では、直径20センチ以上の落葉樹が根元近くから綺麗に伐採されています。それを見て「この雑木林にはよく手が入っている」ことを理解しました。実は、この作業には、私自身、思うところがありました^^

15年ほど前、私は当時住んでいたイギリス南部の、環境保全団体の活動で、これと同じ作業をやることになり、「なんで木を保護するのに、木を切るんだ?」という疑問を晴らせずにいました。

森林保護といえば、白神山地のブナ林や、屋久島の縄文杉みたいな「原生林」を「できるだけさわらないでおく」ことだと思っていた当時の私。でも、イギリスの自然は、全てが人の手の入っている、いわゆる「雑木林」。つまり、人がそばで生活し、森に入り、活用することで、生かされてきた自然だったのです。そこでは、オークや、ヘーゼルといった落葉樹は、数十年のサイクルで、根本から伐採する(coppisingと呼ばれていました)ことで、萌芽を伸ばし、定期的に切り出すまっすぐな枝は、薪やクラフトに利用され、木は寿命を延ばし、森は健康を保っていたのです。

手の入った森、っていうのはこんな感じ。
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そんな理論を知らなかった私は、いくら英語で説明をきいても、自分の持っている日本語の知識と繋がらず、当時まだそれほど情報が多くなかったインターネット上で、日本語の関連情報を検索しまくりました。そして、この素朴な疑問に答えてくれたのが、早稲田大学の所沢キャンパスで、里山や雑木林の保全を行っている研究室の書いているレポートでした。

どこの誰ともわからない、外国にいる学生の送ってきた長ったらしい質問に、その研究室の方は、大変丁寧に、日本語で説明してくれました。それで初めて、その時イギリスで私が行っていたことが、日本の雑木林や里山の保全でも、同じように意義あることと考えられている、と理解したのです。

15年たった後、犬と散歩しながら、突然その記憶がよみがえりました。「そうだ、あれは、ここだったんだ!」と。

それで、そんな「人の身近にある自然」こそがトトロのふるさとなんだぁ、と初めて自分の中で「つながった!」気がして。

一度ぐらい、きちんと「となりのトトロ」でも観てみようかなぁ、と、遅まきながら思うのでした^^
by nicecuppatea | 2013-09-09 19:53 | イギリスでのこと(環境保全) | Comments(0)

一番最初のバスケット

新年おめでとうございます。

去年のラスト一か月は、フルマラソンから引っ越しまで、足腰の筋肉を硬直させるような出来事が自覚なしに続いたようで、仕事納めの頃から、どうにも脚の付け根が痛くなり、年末はほとんど歩けず寝て過ごす始末。。。ちょっと楽になり、家の片づけを…と段ボールなどを持ち上げると、とたんに症状は逆戻り。「痛いところでない部分の筋肉の硬直が原因で、股関節が痛むこともある」とかで、なんだか自分がよくわからない「自分の体のしくみ」に、年明け早々から翻弄されています^^;;

そんなことで、動かないでいると自然、身の回りで忙しい時はすっとばし、気にもかけてなかったことを、改めて書き留めたくなったりして。

まだうず高く積まれている段ボールの、そのまた上に雑然と積んである手作りのバスケット類。その中の一つを改めて眺めてみました。
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なんともアンバランスなバスケットですが・・・。これは14年前、イギリスのマンチェスターで、二日間かけて編んだ、初めての自作のウィローのバスケット。よく見ると、右側の編み芯はフレームの内側、左側の編み芯は外側にでていますが^^先生が気づいてくれた時にはすでに修復不可能なところまで編み進んでいたので、そのまま完成させました。

習ったのは、環境保全チャリティ「BTCV」が行っていた「ウッドランド・クラフトコース」の一環でした。前も書きましたが、イギリスの林の中でもコピス(Copice)と呼ばれるところなどは、日本の里山に似ていて、昔から人の生活の近くにあった雑木林です。ヘーゼル、イングリッシュ・オーク、ホーソン、エルダー、ウィローといった木々は、数年ごとに根元から伐採して枝を更新させます。

その作業はコピシング(Copicing)と呼ばれ、その結果切り株から伸びてくるまっすぐな枝は、家具や家畜用のフェンス、そしてバスケットづくりなどに利用されるのです。そのように「切り出した木の用途があること」が雑木林の保全につながるという考えからバスケット編みのコースも環境保全チャリティが行っています。

材料のウィロー(柳)は編む前に一週間水に浸してやわらかくします。その状態で編めるのは2日間。固くなった枝を再び水につけることもできますが、そうすると皮が破れたり、色があせたりします。いろいろと手間がかかりますが、それもまた楽しくて。

日本で竹を使った「やなぎごおり」が存在するように、イギリスでは卵入れから棺桶まで、あらゆる収納用具がウィローで編まれ、産業革命時代にその需要は最盛期を迎えたのだとか。日本の竹細工のように、伝統的で、地域の特徴のある編み方がたくさん残っているようです。

その深い世界を今年こそ改めてイギリスで覗いて見られればなぁ…。まぁ、新年なので、こんなことも考えます。

この、「初めてのバスケット」はキッチンでジャガイモを入れて使って14年。これからも生活の中で使い続けていこうと思います。

まあ、年の始めから長い文章になったこと…(笑)
by nicecuppatea | 2013-01-03 20:44 | イギリスでのこと(環境保全) | Comments(2)

冬の生垣づくり

先週金曜は東京に降った雨にも雪がまじって本格的に冬になってきた感じがします。バスケットを編む時に使うツルなどの収穫は冬が一番。なぜなら植物はみな活発な成長を止めて葉を落とし、ツルなども水分をあまり含んでいなくて締まっていて乾きやすいし、そのまま編んでもあとから縮む割合が少なくてすむからです。植物が春に備えて、この時期は生命維持の活動レベルを最低限まで落としているからでしょう。そういう、植物が「寝ている」状態の時が、植物の「植替え」には一番いい時期だと言われています。

イギリスにいた時、毎週南部ハンプシャーの里山で地元のボランティアのおじさんたちと里山の景観・生態系維持を助けるようなボランティア仕事をしていましたが、この時期の定番仕事がhedgelaying(ヘッジレイイング)という「生垣づくり」でした。

ハンプシャーなどイギリス南部の伝統的景観に生垣(ヘッジ、ヘッジローとも言います)は欠かせないものです。作り方は地方によって多少の違いがありますが、どれも牧場の境、敷地の境などにヨーロッパナラ、ホーソン、ブラックソーン、スピンドル・ツリー(マユミ)、アシュ(トネリコ)、エルダー、ドッグウッド(ハナミズキの仲間)、ゲルダーローズ、ウィロー、クラブアップルなどあらゆる在来植物で構成された分厚い緑の「境目」として存在する、と言う意味で共通です。

イギリスの伝統的景観になくてはならないものであるだけでなく、そこに住みかを作ったり、その植物の葉や実を食べる生物を宿らせる、生物多様性の宝庫でもあります。私にとっては、ジャムやリキュールづくりのもとになるさまざまなベリー類の宝庫でもあります(^^
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真冬にはよく新しい生垣を作るため、たくさんの苗木を植えたものです。上に書いたような在来種の、それもできるだけ近隣の木で採れた種から育てた30センチほどの苗木を生垣をつくりたい線にそって50センチ間隔くらいの割合で植えていく作業をひたすら続けていくのです。

これらの植物は皆大きな木に成長する木だということを考えると、日本であれば考えられないほどの密植(笑)でもこうして密に植えることで植物は巨木にならずに双方の木と枝を絡ませ合いながら分厚い、しかも(私の目から見れば)様々な種類のおいしい実がびっしりなる、グリーンの壁を築いていくのです。でもそんな成熟したヘッジになるには何十年もかかります。日本であれば、もう大きくなった木を移植して促成で生垣を作りそうな気がしますが、こちらは何とも気の長い話。たいてい寒い中での単純作業ですが、私の好きな冬の作業のひとつでした。何年も後のことを考えて苗木を植えるのって夢があるじゃあないですか。

e0151091_1155445.jpg数年前、休暇を取ってイギリスに行った時も、到着翌日にはしとしと冷たい雨の降る牧草地でレインコートを着て再び苗木の植樹を手伝いました。
なぜ休暇を取ってきた場所で、こんな天気の中でこんな重労働を好き好んでするのか…さすがのイギリス人もいぶかしげでしたが(笑)2年後の春に同じ場所を訪れたときの写真がこれ。(周りのワイヤーは若木を放牧中の牛が食べてしまわないようにするための一時的なものです)道はまだ長いですが、こうしてイギリスではあちこちで一度は失われたヘッジが復活しています。昔あったものの価値を再評価して、「なくなってしまったから仕方がない」ではなく「では再生しよう」という考え方が何というか私を明るい気持ちにさせてくれます。

山梨の田舎を散歩しているとイギリスのヘッジは日本の「用水路」と役割や性質が似ているなあと思います。私が子供の頃、田舎の家や畑の境には石垣でできた用水路がそこら中に走っていて、小魚や貝が住んでいました。でも用水路の泥さらいや清掃は、高齢化してきた住民に負担になるなどの理由もあって徐々にコンクリの用水路にとって変わっていきました。イギリスでもヘッジは管理の手間がかかることから人工的な柵に変わってしまった場所が多いのだとか。でも、「境目」という物理的な役割だけでなく、美しい景観を作り多くの生きものを宿すというさまざまな意味での「価値」が再評価されて、今では農家の人が伝統的なヘッジを再生する場合、自治体などからかなりの補助金がもらえるそう。日本の用水路も、昔のように生き物が住みかとできるような自然の形に戻しましょう、そのためにお金をだしますよ、なんてことになったらずいぶんと心が弾むだろうなあ。
by nicecuppatea | 2009-01-11 11:07 | イギリスでのこと(環境保全) | Comments(2)

さよならQE2

おととい、イギリスのネットニュースのサイトを見ていたら、世界の豪華客船のシンボルとして40年以上君臨してきたクィーン・エリザベス2世号(QE2)が最後の航海にでた、と伝えていました。

QE2の母港はイギリス南部のサウザンプトン港。あのタイタニック号の母港でもあったところです。この航海からQE2が帰ってくることはなく、19日間の航行を終えて到着した中東ドバイで今後はホテルとして利用されるそうです。隣町のポーツマスで3年半を過ごした私には少なからずも感慨深いニュースでした。

私がQE2に思いを馳せるのは、船自体に対する思い出というよりは、船を見た時の周りの状況に対する思い出といえるかもしれません。

私がQE2の姿を見るのは、たいていサウザンプトンの港から数キロ離れたディブデンという、港へ出入りする船の、外海へ出るための通り道(水道)に面した地区でした。サウザンプトン港の利用拡大に伴う港の拡張工事をしたら、その周りに飛来するシギ・チドリなどの「渡り鳥」の生態にどれほど影響が出るか、「環境影響評価」というのをやっているグループの一員として冬に飛来する海鳥の調査をしていた時です。

シギやチドリは波打ち際でえさを捕る習性があるので、明け方潮が満ちて来るに従って岸辺に近づいてきます。そこで、暗いうちに(トリが見ていないうちに…)浜に網をしかけて、その後は明るくなって鳥がそこまでやって来るのを茂みの影に隠れて(トリに見つからないように…)じっと待つのです(^^;

暗いうちに浜辺に網をしかけたら、その後は浜から少しはなれた藪など物影にじっと隠れて明るくなり、鳥が舞い降りてきて網の前でゴカイなどついばんでくれるのを待つのみ。ちなみに冬鳥の調査だったのでこの作業をするのは冬の1月とか2月の明け方です。南部といえども1月のイギリスの明け方の海辺は、半端なく寒いっっっ!のです。

魔法瓶にいれたココアなどを飲みながら(でもトイレがないのでほどほどに)寒さを紛らわしつつただただ海を見ていると、サウザンプトン・ウォーターと言われる目の前の水路みたいなところを巨大な星の山のように見える船が通って行きます。外海でその船が小さくなるまで見送る…というようなロマンチックな場所ではなく、何てことのない工業地帯の水路ではありましたが、右から左へ、巨体に似合わぬ静けさで目の前を堂々と通り過ぎていく船をずーーっと眺めていました。

ちなみに、1月の朝の6時にありったけの防寒具を着て砂浜でひたすらトリが降り立つのを待っていた…と言うとさすがのイギリス人にも「もの好きだねぇ」と言われたものです(一応イギリス人のグループの中で働いていたんですけどね)。…そして冬のイギリスってのはかなりの確率でその時間に雨が降り、強い風が吹いている…なんてこともあるのです。自分でも「あたし、なんでこんなことしてるんだろ…?」と思ったことが一度ならずありました。

それでもそこでみたQE2の大きく静かな姿への畏敬の念と、ただひたすらトリが降りてくるのを待つ…という一見、とても日常の生活のペースからかけ離れた行動の思い出があいまって、なんとも他に比較できるもののない、ある意味何にも汚されない私だけのQE2の思い出を作ってくれているような気がしたりします。

「あぁ、もうサウザンプトンにQE2はいないんだなぁ」と、東京での仕事の合間にデスクでこっそりYahooのニュースをチェックして、誰にも説明できない郷愁にひたっておりました。
あっといけない、仕事、仕事…。
by nicecuppatea | 2008-11-14 07:29 | イギリスでのこと(環境保全) | Comments(2)