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プロセスを楽しむ

最近巷では不況にからんで、節約術、外食ではなく家庭で安くおいしく料理するコツ、スーパーの価格値下げのニュースなど、「不況の中どうお得に生きていくか」みたいな切り口のニュースが連日テレビや新聞を賑わしていますね。

確かに、身入りが減ってきたり、原材料の高騰で商品の値段が上がったりする中では、日々の普通の生活が難しくなってきているのは事実なんでしょう。でも時々思うことがあります。

「だってXXに○○円かかるでしょ、△△も買い換えないといけないし、◎◎もしないといけない、◇◇も必要…ああお金が足りない」なんていう言葉を巷で聞くたびに、「でもそれって本当に思っているほどのお金をかけないとできないことなの?」と。

イギリスにいる時友人知人を見ていて驚かされたのは、誰もが何でもかんでも「自分でやろうとすること」でした。家のドアのつけかえ、台所まわりのタイル張り、リビングの壁のペンキ塗り…。「すごいね」と感嘆する私に「人に頼むとお金がかかるのよ。それに本当に腕のいい人かどうかもわからないわ」。どうせ下手ならお金を払わずに自分でやったほうがまだまし、ということでしょうか。高いお金を払って大工さんに依頼する日本では圧倒的にお金を払った人の腕をお客である我々が信頼していますが、どうもそういう事情でもないようでした。それがDIY(Do It Yourself)をこれほどイギリスで盛んにした裏事情のひとつとも言えるかもしれません。

その代償として、お手洗いの取っ手を勢いよく回したらそのまま抜けてしまったり(ちなみにディナーでお呼ばれしたお宅での出来事でした…)、雨になると湿度を吸った勝手口のドアが「開かずの扉」と化すような立て付けだったりと、驚くような不具合もでてきたりしますが(^^でも、DIYだけではありません、家族旅行の手配、自分の結婚披露宴のアレンジなどなど、とにかく自分でやっているから、人に頼むのとは比べ物にならないほど安く済むのだろうな、という例はたくさんありました。

「そんなこと、忙しくてしてられない」という人もいるでしょう。一般的に日本人は(と大きく括ると誤解がありますが、概して、の話です)、自分で考えるのは時間がかかるしよくわからないから、多少お金がかかってもきっちりした形で出来上がっているパッケージ、セット、といったものに惹かれる傾向があるのではと思います。朝・昼・晩と食事が全てついて、何も自分で心配することのない海外パッケージツアーなどを好むこともしかり、保険に加入するといえば、「提案メニュー」としてユニットタイプをそのまま使ったり。

えてして、「サービス業」と言われているものは、自分が考える代わりにいろいろ調べて、自分の代わりに選んでくれて、自分の代わりに何かを実施してくれている、という性質が少なからずあるでしょう。結果、そのサービスを受ける我々は、時間や手間をかけて考える代わりにお金を払って簡単にコトを済ませることができる、というものです。

便利ですよね、そういうのって。でももしかしたら今の時代って、一度、原点回帰するというか、そういう自分たちの普段の行動を振返り、考え直すきっかけなのかもしれません。今まで「到底自分ではできない」と思っていて、人にお金を払ってやってもらっていたこと、それはもしかしたら専門家に「そういう風に思わされていた」のかもしれない…と疑り深い私などは思ってしまいます。「パッケージ」の中身をよくよく見たら「なんだ、私こんなことしたかったわけじゃない」という本意に反するようなことも、知らず知らずのうちにやっている、っていうような可能性だってあるかもしれません。

お金を払って人に頼む、サービスを受ける、というのは、うがった見方をすると自分が考えることをやめてしまう、そのプロセスを自分で経験する機会を逸してしまう、ということにもなるのかなーと思うことがあります。身の回りの様々なサービスを受けず全てを自分でやるなんてとても無理だけど、こんな時だからこそ、「結果」に対価を払うのではなく、すこし時間をかけてプロセスを楽しむ、それも安く!ってのもいいかなという気がします。私の人生の中の目的は、自分で、自分の家を建てることかなぁ(笑)
by nicecuppatea | 2009-02-03 20:07 | 暮らしのアイデア
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