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ブラックベリーの喜び

ばたばたと慌しく、生活を丁寧に味わう間もなく流れている…と感じている時に、またまた心の底から元気になるような小包を頂きました。

開けてみるとそこにはお手製のマフィンと冷凍のブラックベリーが!再びバーネットヒルさんから、暖かい差し入れを頂いたのでした。。。
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ピーチともども夫婦で一方ならぬお世話になっているゲストハウスで、毎年秋の特別な日にお邪魔していたのですが、今年は処々の事情でそれもならず。

そんな状況がさらに日常をせわしなく感じさせていたのかもしれません。あぁ今年も栗拾いの季節がやってきたなぁと思い、その季節と思い出すのでした。

ブラックベリーはエルダーとともに、私のイギリスでの生活や思い出に深く深く根付いています。

ブラックベリーのなる植物はブランブルと呼ばれ、大抵は旺盛に茂るトゲの生えたツルで、初夏には一晩で数センチも延びるのだと聞きました。そのツルは地に付いたところから根を出し、根は地下茎で旺盛に育ちます。

その旺盛な生育から、イギリス人で庭いじりに熱心な人は大抵ブランブルをどうコントロールするかに頭を悩ませていたようでした。「引っ越した先の家で新しく庭に芝生を敷いたんだけど、その下にあるブランブルの根をとりそびれてしまった」なんていったら、庭仕事最大の悲劇。また、牧場を歩いていてウサギの穴の上にブランブルが茂っていてわからず転んでしまった・・・その回りにはネトル(イラクサ)と呼ばれる、触るとひりひりする草がびっしり生えていた、なんていうと「惨めな経験」の見本のようなもの。

…っと言う感じで、ブランブルはその成長の強さやトゲのついたツルから、旺盛に茂る厄介な植物の代表のような、どれだけ切っても、どれだけ抜いても絶対に日常生活からなくならないもの、とイギリス人が信じているもののように見えました。

でももしブラックベリーが世の中からなくなったら、それはそれは嘆くだろうなぁ。というのもこんなに食生活に馴染んだ、誰もが摘み取れるフルーツはないから。自然保護地区の入り口の立て看板にもよく書いてありましたっけ。

「この保護地区の植物を、ブラックベリー以外は取る事を禁止する」って。

これだけどこにでも生えていたブラックベリー、実は食べるものとなるとけっこう吟味が必要でした。というのもブラックベリーには交雑が多く、場所場所ですこーしづつ実のクオリティが違うのです。まぁ、育った場所や日あたりにもよるのかもしれません。ウチの近所の銀杏だって大きい実がなる木とそうでない木があるし(笑)

大きく、瑞々しく、甘い株を見つけたら、そこの実が熟すのを待って取りに行きます。かなりの確立で、鳥やリス達に食べられてしまっている事も多かったのですが。3つ摘むうち1つを口に放り込みながら、手を真っ黒に染めて摘んだブラックベリー。

イギリスではあんなに旺盛に茂っていたのに、環境保全地区で作業をする時はいつも刈り込みに苦労する厄介者だったのに、その頃を懐かしがって日本に帰国して、小さい苗木を購入して植えてみたら、夏が近づいてもほとんど成長しません。どの世界でも弱々しく見えるものは大事にしたくなるもの。一生懸命大切にしましたが、真夏にイネ科の雑草に埋もれて力なく枯れてしまいました…。やはりここの気候でうまく育つ植物ではなかった、ということでしょう。

頂いた袋一杯の大粒ブラックベリーを見ると、この実がとれた木は元気だったのだろうなとすぐわかります。八ヶ岳山ろくの気候も、空気も、植生もなんだかとてもイギリスに似ているような。

イギリスで作ってもらったパイほどおいしいものが自分でできるかわからないけれど、週末はリンゴとブラックベリーのパイをつくってみよう。

心のこもった季節の贈り物に、心から、ありがとう。
by nicecuppatea | 2009-11-06 08:10 | おいしい実
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