山梨の畑では、若い麦穂が空に映え、青空を背景に揺れる季節となりました。
この麦は10年以上前、ここの畑の「緑肥用に」と隣の農家のおじさんが種まきしてくれてたもの。緑肥とは、草をわざと生やしてそれを土に鋤き込み、土を豊かにする有機質としてつかうもののことをいいます。このあたりでは桃畑の下にびっしり種を撒き、ある程度育ったら耕運機を転がして草ごと土の中に鋤きこんで肥料分にする、というものでした。桃畑を辞めて何年もたった今でも、いくらかの種が毎年飛んでは、毎年畑にぽつぽつと麦が生えてきます。 農業素人の私は初めてみる麦の穂の形の美しさに魅かれ、なかなかをそれを刈りとって畑にすきこむことができません。それだけでなく私がぜひ麦の穂で試したいと思っているクラフトがあるのです。 イギリス滞在以降、日本に帰ってきてもとても心惹かれるものの一つに「コーンドリー」と言われるものがあります。あまり馴染みのない言葉かもしれません。コーンドリーって、こんなものです。この写真はWikipediaさんのもの。 もともとイギリスでは昔むかし、穀物には「穀物の精」が宿っているもの、と考えられていたそうでその年の最後の穀物を刈り獲ると、穀物の精は居場所がなくなってしまう、と考えられていたとか。そうすると来年以降その畑の豊作は望めなくなるので、最後の穀物を刈り撮ったら、その年の一番よい麦穂を使ってこういう飾りを編んで、それを納屋や家の中などにつるしておく、って意味だったそうです。つまり、穀物の精の冬のお宿、ということです。 で、春に畑を再び耕す時にはそのコーンドリーは畑に戻して土に鋤き込む、そうすると再び穀物の精は畑に戻る、と考えられていたのだとか。 これはキリスト教が広がるより前にイギリスにあった信仰(イギリスではペイガニズムという言葉でよく耳にしましたが、これはキリスト教的な観点からそれ以外をさす差別的な言葉、と日本の辞書などには注釈がついていました)に基づいて広がった考え方だと聞きました。どちらかというと日本の八百万の神というような考え方に近い思想に基づいた行いで、日本人の私などには最初に聞いた時からいやにしっくりくる考え方でした。難しいことはとにかく、畑の精の冬の宿、という考え方が無条件に魅力的な感じがします。 現代では穀物の精がいなくなっちゃたから不作に見舞われた…というような考え方をすることもなくなり、コーンドリーはおめでたいオーナメントなどとして、広い意味でお飾りとして使われているようです。形は地方によって、さまざま。でも下に見られるような「らせん」の編み方が一般的です。もともとはこの中に穀物の精をとじこめられる、と考えられたからだとか。 バスケット編みはどちらかというと秋冬の作業。でも今年はこの麦穂を刈りとったらぜひ日本の麦穂でこんな素敵なコーンドリーが作れるように…なることが今シーズンの目標かな。
by nicecuppatea
| 2009-05-04 09:39
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